半分の世界


 
私は片方の目を閉じてみた。
 
半分の世界しか見えなくなるのかとも
思っていたけれど、
想像していたよりも はるかに見えなかった。
“今まで見えていたのに”という概念が、
片方の目を閉じたことによって
生まれてしまった。
そして改めて気付いた。補ってくれていた、もう片方の目の存在を。
 

それ以上でも、それ以下でもない世界。
そこに存在しようとするならば
自分が研ぎ澄まされなければならないのだろう。
そうしなければ、恐らくは
想像以上のことを 見失ってしまうのだろう。
 
それ以上でも、それ以下でもない
半分の世界は
時には自分専用のシェルターのようにも思えて
それなりに心地は良かったり
時には
安心にも似たような錯覚を覚えるのかもしれない。
 しかし、
自ら願ったわけではなく入り込んでしまった者にとって
時に そこは
絶望にも似たような場所でもあり
何らかの可能性を秘めた場所であるようにも
思えるのかも知れない。
 
自分がそうなってみないと、知り得ない感情。
自分がそうなってみないと、わからない
絶望と、絶望とは裏腹の小さな希望の光。
 
 
今、漂っているのは一体何処なのだろう。
 
 
そんなことを思いながら
閉じていた片方の目を見開くと、
“現実”という世界が
ただひたすらそこにあった。
とどまることを許されない流れのある世界が、
確かにそこに存在していた。